「学生のうちは、もっと遊んでください。」
採用面接で、別所海氏はそう伝える。普通なら、「勉強してください」「社会人になる準備をしてください」。そんな言葉が並びそうな場面だ。だが、彼は違う。
旅行へ行くこと。友達と笑うこと。ライブへ行くこと。恋愛をすること。夢中になれる趣味を見つけること。その全部が、社会人になってから必ず武器になると信じている。
だからこそ、仕事よりも「遊び」を勧める。この考え方は、現在110店舗を統括し、PR企画まで担うWEGOの中核を担う立場になっても変わらない。別所海氏が育てているのは、人材ではない。自分らしく挑戦し続けられる価値観だ。
Profile
Kai Bessho
別所海(べっしょ・かい)
株式会社ウィゴー ブロックマネージャー兼PR企画マネージャー。2011年、学生アルバイトとして入社。現在は名古屋から北海道まで約110店舗を統括しながら、PR企画責任者としてブランド戦略やイベント企画、地域ごとのブランディングも担当する。店舗運営だけでなく、企業ブランドそのものを育てる立場として、若手育成や新しいカルチャーづくりにも力を注いでいる。

Turning Point
人生を変えたのは、一つのミーティングだった
もともと古着が好きだった。音楽活動を続けながら、将来はバイヤーになれたらいい。そんな軽い気持ちで始めたアルバイトだった。
しかし入社して数か月後、年末商戦へ向けた店舗ミーティングで衝撃を受ける。役職も年齢も関係なく、全員が本気で売上について語り合う。
「この人たち、本気なんだ。」
その熱量が、人生の進路を変えた。気づけばアルバイトの延長ではなく、自分自身もその輪の中心へ立っていた。
服を売る仕事ではない。「好き」を育てる仕事だ
別所氏は、自分たちをアパレル企業とは呼ばない。
「ライフスタイルカルチャーストア」
その言葉に、WEGOらしさが詰まっている。洋服だけでは終わらない。音楽、アート、イベント、SNS、コミュニティ。若者の「好き」が交差する場所をつくること。そのために店舗があり、PRがあり、ブランドが存在している。
だから彼の仕事は、服を販売することではない。「このブランドが好き」と思える体験を積み重ねることなのである。

「メジャー」になるために、ブランドを変えていく
WEGOは現在、2030年売上500億円という目標を掲げている。国内だけではなく、海外展開、EC強化、グローバルPRも加速している。
だが、別所氏が目指しているのは数字だけではない。
「ユニクロみたいに、日常会話の中で自然に名前が出てくるブランドになりたい。」
そのために必要なのは、誰にでも刺さる商品ではない。それぞれのカルチャーに寄り添い、一人ひとりの「好き」を理解すること。
メジャーになるとは、個性を捨てることではない。個性を広げ続けることなのだ。
会社を卒業した後も、通用する人へ
毎年100人を超える若手社員が入社する。別所氏が最も大切にしているのは、会社の中だけで活躍する人材を育てることではない。
「もしWEGOを離れても、社会で活躍できる人になってほしい。」
その想いで、日々後輩と向き合っている。
「辞めたいと思ったことは何度もあります。」
そう笑う。それでも残り続けた理由は、会社ではなく、人だった。自分を信じてくれる後輩。期待してくれる仲間。その存在が、何度も背中を押した。
「遊び」が、未来を変えていく
別所氏は、学生へ向けて何度も同じ言葉を送る。
「今しかできない遊びをしてください。」
社会人になれば、仕事はいつでも始められる。だが、友人と自由に笑える時間は、もう戻ってこない。
遊び。失敗。挑戦。遠回り。そのすべてが、いつか誰かを喜ばせる企画になり、新しいカルチャーになり、ブランドを育てる力になる。
だから彼は、今日も若者へ「遊べ」と伝え続ける。それは決して甘やかす言葉ではない。人生を豊かにする経験こそが、誰にも真似できない価値になる。そう信じているからだ。
Editor's Note
「好き」を仕事にした人は、強い。
別所さんの話を聞いていて印象的だったのは、「仕事」の話よりも、「人」や「遊び」の話が多かったことだ。
売上や店舗数、海外展開という大きな目標を語りながらも、その根底にあるのは「人は経験で育つ」という一貫した考えだった。
だからこそ、学生には遊ぶことを勧め、後輩には挑戦を任せ、ブランドにはカルチャーを宿そうとする。
店舗を増やすことが目的ではない。誰かの「好き」を育て、その積み重ねがブランドの未来になると信じている。
別所海という人物は、アパレル企業のマネージャーという肩書きだけでは語れない。ブランドは、商品だけでは育たない。人の記憶に残る体験があり、その先に「好き」が生まれる。
別所海氏が育てようとしているのは、店舗でも、流行でもない。人の人生に残り続けるカルチャーなのかもしれない。


